最近、情報システム部門の評価への関心が高まっている。この関心の高まりの背景には、企業経営における情報システムの重要性とそれに伴う情報システム部門のコスト増大、及び当該部門に対する評価の困難さがある。すなわち、経営者が情報システム部門の業績評価と情報投資の優先順位付けをコントロールできていないということである。
情報システムの重要性はアプリケーションシステム構築目的の変化により高まってきている。
従来、アプリケーションシステムは特定部門のユーザ要求からスタートし、事務処理の省力化・効率化を目的として構築されてきた。今日では、情報は情報システムの発達により部門間、企業間でスピーディに連携されるようになり、かつ特定部門の業務システムからビジネス戦略に直結したシステムへと変化してきている。
具体的には、受注・出荷システム、販売・物流システムから戦略的受注システムやSCMシステムへの変化があげられる。また、個別企業経営からグループ企業経営への移行による経理業務のアウトソーシング、シェアードサービスを考慮した個別決算システムと連結決算システムの導入や、事業の選択と集中によるリストラクチャリングと業務プロセスリエンジニアリングを目的としたERPパッケージ導入等がある。
情報システム部門のコスト構成要素は機能別に分類すると、アプリケーションシステムコスト、情報基盤コスト及び企画・運用に従事する人件費に大別される。また、形態的に分類すると、開発・購入コスト、維持(保守)コスト、運用コスト、研修・管理コスト等があげられる。
そしてこの情報システム部門のコストは増加する一方である。これは、アプリケーションシステムの省力化・効率化目的から戦略目的への変化による新規構築のための開発・購入コストの増加とそれらに伴う維持コストの増加、新技術採用に伴う情報基盤コスト、研修・管理コスト等の増加が要因とされる。
情報システム部門は一般的に間接部門、コストセンターと位置付けられている。それが故に多くの企業では予算編成時点で情報システム部門のコストは何らかの配賦基準に基づき、最終的には事業部門へと配賦されている。従って、他の間接部門(経理、人事部門等)と同様に予算・実績対比での評価となり、事業部門では業績評価の際にこの配賦額にあまり関心を示していない場合が多いと言える。(図1参照)

事業部門がこの配賦額に関心のない理由は、自部門の個別の事業やオペレーションに対して情報システム部門がどのくらい貢献しているのか本当のコストを理解していないこと、また情報システム部門の事業部門に対する説明努力不足のためと考えられる。そこで、間接部門のサービス提供に対する対価の測定に際し、間接費管理手法のABC/ABMまたは業績管理手法としてのバランススコアカードの適用が考えられる。
一方、情報システム部門は他の間接部門と異なり、多額のアプリケーションシステムと情報基盤に対する情報システム投資がある。この情報システム投資の評価(意思決定)は、従来から個別投資案件毎に費用対効果分析を実施し、経営者による意思決定が行われていた。その際の投資案件の多くは特定部門に直接コストが帰属するものであり、例えば、経理部門の効率化による人件費削減、決算日程短縮、管理の質の向上という定量的・定性的効果においては、人件費削減という定量的効果のみでの意思決定が可能であった。しかし、今日情報システム投資の評価に際しては、定量的効果は少額となり定性的効果に依存し、また様々な定性的効果に基づき投資の優先順位を決定せざるを得ない状況となっている。
この定性的効果を経済的価値に置き換え評価を行う際には、当然情報システム部門のみを見ていても行うことはできず、サービスを享受する部門との間でコミュニケーションを取り、両者の合意を得るという意味で2つの側面から考える必要がある。(図2参照)

また、経済的価値の測定・評価方法を、インフォメーション・エコノミクス技法(マリリンM.パーカー、ロバート J.ベンソン著「情報システム投資の経済学」日経BP社)は以下の6分類を提案している。
経営者の情報システム部門に対するニーズは、最良の情報システムを適正な価格で選べる(すなわち情報システム投資の優先順位付け、固定費を変動費化するアウトソーシング等の代替案をも可能にする評価ができるということ)柔軟性を持ちたいということである。このニーズに応えるためには情報システム部門は自部門の使命・役割を再確認し、情報システム全体図(作成されていない場合には西暦2000年問題の際に棚卸した全社情報システム資産の資料をベースに作成する)を事業・業務との関係、コストとの関係を踏まえて整理する必要がある。そして再確認した使命・役割とシステムライフサイクルを考慮して自部門の業務プロセスを構築する。また情報システム部門の業績評価方法は、会社全体の業績評価方法との整合性、情報システム投資の意思決定で使用される評価方法との連携をとり、経営者が評価できる仕組み作りを開始すべきである